シンガポール証券所Catalist市場への上場プロセス 【Stepゼロ】

さて、今回から数回に分けて、シンガポール証券取引所(SGX)の新興市場、Catalist(http://www.sgxcatalist.com/)への上場プロセスについて考えていきます。この市場は、いまヨーロッパで注目を集めているロンドン証券取引所AIM市場のアジア版で、ビジネスモデルと事業性が明確であり、市場が公認する後見人(AIMはNomad、CatalistはSponsorといいます)が承認した会社であれば上場できること、いわゆるSOX法での内部統制構築が必須でないこと、短期間で上場できること、機関投資家中心の市場であること、などの理由で、注目を集めています。

その一方で、市場がまだ出来たばかりで、最初のFull sponsor 10社も今年に2月4日にリストされたばかりと、詳細はほとんど分かっていません。恐らく、日本では誰もわかっていないことでしょう。かつ、上場を希望する企業としても、その業種や事業プラン、上場メリット、上場後の継続開示が出来る社内体制の構築などなど、各社事情は様々です。よって、一般論で応えられることは、非常に限りがあります。
それを前提とした上で、私なりに「通常のプロセスはこうだよね」というものを考えましたので、この場を借りてご説明させてください。

【ステップゼロ:まずは企業10年の計で将来像を考える】
と、いきなり偉そうなことを書きますが、ご容赦ください。上場を考える、それも海外市場で検討するというのは、まず「世界が将来的にどうなるか、そして自分の会社が10年後にどうなっていたいか(どうならねばならないか)」ということを突き詰める必要があります。そもそも、私が今回このSGX Catalist上場に関心を持った理由のひとつは、「日本の株式市場の低迷」です。詳細は省略しますが、今後日本企業は日本だけでビジネスをやっていたら、国内での株式上場はもちろん、ベンチャーキャピタルからの資金調達も困難になるでしょう。だからこそ、アジア、欧米の市場でのビジネス展開に打って出ることは、本当に重要だと思いますし、それに関連して株式上場もアジア規模の視点で考えるべきだと思うのです。その中で、国内市場で上場できるのであればそれでいいですし、アジアで広くやって行こうと決意するなら、Catalistを検討する意義があると思います。
 そのハードルは、もちろん低くありません。まず全て英語になりますので、申請書類の作成はもちろんのこと、SponsorやCatalistとの交渉、上場後の開示、株主総会の運営なども、全て英語で対応できるスタッフが必要になります。会計基準もUS GAAPあるいは国際財務報告基準になります。また、事あるごとにシンガポールへの出張も必要になるでしょう。今の日本企業にとっては、とても厄介なものばかりです。

とはいえ!! 企業というものが今後10年、20年と継続していくのであれば、こうしたグローバル化、英語化する世界に対応していかねば、遅かれ早かれ苦境に陥ることでしょう。それこそ、10年前の1998年当時と現在における世界の変化がどれだけ大きいかを改めて省み、そしてその変化のスピードが加速していることを考えれば、嫌でもこうしたハードルを越えていかねば、その先の将来は無いと思います。
変化の激しい今の時代、事業の将来は先が読めなくなり、来年のことだって予想が付きません。とはいえ、というよりはだからこそ、企業としては10年の計を持ち、「フラット化する世界」に適応する準備を進める必要があると感じています。それも今すぐに! 
そしてその一環として、日本企業がこのまだ未開の市場であるCatalistへの上場に、チャレンジしていただきたいと、切に望んでいます。

石崎 浩之
国際ビジネスコンサルタント
ブレインストーム・ワールドワイド代表
http://www.brainstormww.com/

今日のBGM:SEAL 「System」
唯一無二の声を持つ黒人Vocalist、SEALのニューアルバム。私はデビュー作から彼の歌に心酔しており、DVDも持っています。ただ、今回はダンスミュージックが中心で、本来の特徴が薄まった感じもあります。