豊かなる日本語表現

こうして文章を書いてるとつくづく思うのですが、やはり日本語って、表現力豊かで饒舌な言葉だと思います。もちろん、私の文章力なんて本当に拙い限りですし、他の言語と比べようにも英語しか知らないため、比較対象も非常に限定的なので、何を根拠にそう言うのかと問われると答えに窮するのですが、日頃からそう実感することしきりです。それも、口語よりも文語で、それも感情や情景の描写に奥行きや深みを持たせるときに、その本領を発揮するように感じています。

英語は英語で非常に機能的な言語で、自分の考えを率直に伝達するときには、とても単刀直入な表現で、直接的に相手の心に届くことも出来ると思います。例えば、「I love you.」はもちろんのこと、「I missed you. (君がいなくて寂しかった、とか、会いたかったよの意)」、「I feel touched.(感動した、とか、お心遣いありがとうの意)」なんて言葉は、日本語だったら気恥ずかしくてなかなか言えたもんじゃありませんが、英語だと自然に出てくるし、相手の心にストレートに伝わります。こうした「好きな相手やものに対して率直に好きと言い切れる」ダイレクト感・力強さは、日本語とはまた異なる趣があります。

しかして文章となると、いい小説に出会ったときには、その表現の幅の広さ、描写力の限りない奥行きに、「日本語って本当に豊かだ」と思います。もちろん、自分が読んだ小説の数なんてたかがしれてるし、本格派である三島由紀夫夏目漱石あたりには、未だ十分目を通せてないので、そんなことを言うのはそれこそ百年早いのかもしれませんが。
また、統計的にはまだ調べてないのですが、近年海外で日本語を習おうとする人の数は増えていると思います。それは、中国や韓国といった近隣諸国だけでなく、アメリカなどにおいてもです。実際に、私の友人の友人にも日本語を習い、数ヶ月東京に語学留学に来てた人がいて、滞在中は彼をいろいろ案内したことがありますし、それ以外にもJETプログラム(http://www.jetprogramme.org/j/index.html)で日本に来たことをきっかけにアメリカに帰国後も日本語を勉強している友人などもいます。そういうこともあり、私の一つの夢は、海外で日本語教育ビジネスを展開することですね。これってつまり、自動車や家電製品、日本食材といった“モノ”の輸出から一歩進んだ、日本語の輸出・日本文化そのものの輸出だからです。

今年、村上春樹ノーベル賞候補として話題になりました。(最終的には受賞はかないませんでしたが)。これは、彼の特異な世界観・表現が、多様な言語や国の人たちに愛読されているからであり、ひいてはその根源にある日本語文章の豊かさも間接的に伝わるからだと思います。だったらいっそのこと、日本語そのものもどんどん輸出していければ、日本という国の理解促進につながるのではないでしょうか? 英会話を通してアメリカ人の感情表現を理解するように、海外の人が日本語学習を通して私達の文化や振る舞いの源泉を感じ取ってくれたら・・・より深いレベルの相互理解につながっていくのではないでしょうか。 久々に手に取った「博士の愛した数式」を読み返しながら、そんなことを思い返しました。

石崎 浩之

国際ビジネスコンサルタント