予期せぬ通訳

私の会社では、いくつかの同業他社とネットワークを組んで、共同案件に取り組むなどのコラボレーションを行っているのですが、その提携先の1つであるL社の主要取引先のアメリカ人President(女性!)が日本に来ていたので、「もっと日本で販売機会を増やすため、マーケティングリサーチをやりましょう!!」という提案書を作ってプレゼンをしていた。するとその最中に、そのPresidentの次のミーティング先である某金融機関クライアントから、「通訳をつけてくれ」という依頼が、提携先社長Aさんのところに舞い込んだ。Aさんは長い留学経験があり、英語はまったく問題ないのだが、体調が優れなかったこともあり、私に「通訳をお願いできませんか? クライアントの方々は基本的にみな英語OK、ただ先方からL社に対する要望は日本語で伝えたいとのことで、その部分を英語でL社Presidentに通訳するだけだから。実質5分か10分です。」とのことなので、ノコノコと平和な顔で付いていきました。
そしたら、相手は某大手金融機関の執行役員とかシステム部の副部長クラスの方々。最近のシステムトラブル、およびその対応に対するクレームを、1時間近くにわたってガンガン言われる状況になってしまいました。しかも、その執行役員は基本的に英語ができそうなのに、クレーム部分はガッツリ言いたかったこともあり、全部日本語で、しかも通訳である私の顔を直視して「どうなってるんだ!?」「明確に答えろ」と詰問してくる、思いっきり矢おもて状態。本心では、「聞いてないよ〜、そもそもオレは何もしてないのに。」と困惑しつつも、「この度は誠に申し訳ありませんでした。この対応については、テスト・QAチームと連携をとり迅速なトラブル対応と経過に対するフィードバックを・・・」なんてアドリブを加えつつ、何とかやり過ごしました。やれやれ・・・

今回のような状況で、突然わけも分からず怒られるような状況はこれまでも経験があり、落ち着いて対処すればなんとかなるんで、それは全然問題ないんだけど、むしろ困るのは、英語の堪能な日本人の前で通訳をやらされること。これは本当に冷や汗もんです。相手は大手金融機関でもかなりハイポジションな方で、アメリカで生まれた方や駐在経験がある人をはじめ、みな多かれ少なかれできる様子。でもって彼女が英語で喋ってる内容に対してそのまま頷いてるのに、その後になって私が日本語で通訳するのはかなり間抜け。しかも、そこで変な訳でもしようものなら、彼らの怒りの導火線にさらに火をつけて誘爆を起こしかねない。今回は、さすがに緊張しました。ま、最後のころは、相手の方も冷静さを取り戻して、ビジネスライクな対応をしていただき、最後はそのPresidentと提携先社長、そして私をエレベーターホールまで見送ってくれたので、ひとまずホっとしましたが。それと、やはり通訳をやると体力を急激に消耗しますね。さすがにバテました。(といいつつ、家に帰ってきたら、別の英文資料の作成で『翌朝までに』というものが舞い込んでて、なんとか4時過ぎに仕上げてメールする羽目になりましたが。)

ところで余談ですが、例え自分が何も悪いことをしてなくても、厳しい表情で問い詰められると、ついつい心理的に平身低頭してしまうものですね。誤認逮捕で捕まった人が、本当はやってないのに強引な尋問を受けると、ついつい虚偽の自白をしてしまう心理がちょっと分かった気がします。

石崎 浩之
国際ビジネスコンサルタント
ブレインストーム・ワールドワイド・インク代表